
★Q1 妻が受ける遺族厚生年金はわかりますが、夫や両親でも受給できるのでしょうか?(2005.11)
@夫が55歳以上のときに妻(年齢は問わず)が死亡した場合、A父母が55歳以上のときに子(年齢は問わず)が死亡した場合、それぞれ夫、両親に遺族厚生年金の受給資格があります。
もちろん、妻、子がそれぞれ在職中(厚生年金に加入)の死亡などの要件を満たしていること、夫と妻、父母と子の間には生計維持関係(生計同一であったり、仕送りなどで生計を維持していたなど)があることが必要です。
最近は共働きや独身者が多く見受けられ、@やAの場合の年金受給も以前に比較して増えているように思います。
なお、夫や父母が55歳以上で受給資格があったとしても、実際に遺族厚生年金が受給できるのは60歳到達後となります。
★Q2 2年前、夫の死亡による遺族厚生年金を受給できませんでした。当時、私たち夫婦で会社経営していてそれぞれ年収は850万円以上でした。しかし、死亡した翌年から年収は400万円位になりました。それでも私は本当に受けられないのでしょうか?(2006.01)
遺族厚生年金を受給するには、死亡当時、死亡した方によって生計維持されていた妻など一定範囲の方が遺族厚生年金を受給できる遺族となります。
ここでいう「生計維持されていた」に該当するためには、死亡した方と生計を同じくしていて、さらに次のような収入に関する要件も満たしていなければなりません。
@前年の収入が年額850万円(所得では655.5万円)未満であること
A一時的な所得があるときは、これを除いて@に該当すること
B定年退職などにより、おおむね5年以内に@になることが明らかと認められること
ご相談者は、死亡当時の年収が850万円未満ではなく、夫死亡後も妻の報酬は高額で継続することが見込まれる状況では、遺族厚生年金の受給できる遺族となりません。
そのため、予想外に、会社の業績がその後悪化して報酬が大幅にダウンしてしまったからといって、遺族厚生年金を請求しても、遡って受給権が回復することはありません。
生計維持の要件は、厚生年金の被保険者または被保険者であった方の死亡当時で判断をすることになっています。そのため、予想しない所得状況の変化があったとしても、遺族厚生年金を受給できないことになります。高額な所得の方は生計を独立して営んでいるという判断によります。
ただし、2年前の死亡当時に、夫の死亡によって経営の問題から妻の年収が下がることが確定的であるというようなことを証明できていれば、遺族と認定された余地もあったかもしれませんが、今からではかないません。
★Q3 夫が在職中に労働災害で死亡しました。3人の子の妻が受給する遺族補償年金や遺族厚生年金はいくらくらいでしょうか。(2006.01)
まず、労災保険のしくみについて解説します。
遺族給付が受けられる遺族で、遺族補償年金を受ける権利のある者を「受給権者」、受給権者となる資格を持つ者を「受給資格者」といいます。
遺族は「遺族補償年金」の他、ボーナスに充当する「遺族特別年金」、さらなる遺族の援護を図る目的で支給される「遺族特別支給金」を合わせて受けられます。
そのうち、遺族補償年金と遺族特別年金は、受給権者及び受給権者と生計を同じくしている受給資格者の総数(遺族の人数)等により、次の通りの額とされます。算定日額は遺族特別年金の計算に用います。
@一人 給付基礎日額(算定日額)の153日分
A二人 給付基礎日額(算定日額)の193日分
B三人 給付基礎日額(算定日額)の212日分
C四人 給付基礎日額(算定日額)の230日分
D五人 給付基礎日額(算定日額)の245日分
なお、受給権者が妻で、生計を同じくする受給資格者がいない場合には、一定の障害の状態にある場合を除いて、その年齢によって年金額が違ってきます。
55歳未満のときは給付基礎日額の153日分ですが、その後、55歳になれば175日分に変わります。また一定の障害の状態にあるときは、年齢の如何によらず175日分とされます。
さて、ご相談者の夫は在職中に労働災害で死亡、3人の子が残され、給付基礎日額は11,562円、算定日額は1,644円とした場合の給付は以下のとおりです。
・遺族補償年金は230日分で年額2,659,260円
・遺族特別年金は230日分で年額378,120円
・遺族特別支給金は一時金で300万円
ただし、ご相談者の夫が厚生年金(一般的な平均給与)に加入していたとすれば、妻は遺族厚生年金と遺族基礎年金を合わせ年額で約180万円も一緒に受給することになります。その際、労災保険の遺族補償年金は80%に減額調整され、2,127,408円となりますが、合わせて、当初、年400万円近くになります。
なお、子が18歳到達後の年度末後は遺族が一人減ることになりますので、その都度年金計算が変わり、年金額は減額になっていきます。55歳以上の妻一人になったときは、労災保険、厚生年金合わせて年額で約300万円位でしょう。
★Q4 夫は55歳、妻は26歳年下の29歳です。子供はいません。夫は20代から会社員で厚生年金に加入しています。今度、若い妻は遺族厚生年金を受けられなくなると聞きましたが、本当でしょうか。(2006.01)
確かに、平成16年の年金改正で、子がいない場合、一定年齢以下の妻への遺族厚生年金の見直しがありました。その内容は以下のとおりです。
@夫の死亡当時、妻は30歳未満で、子がいない場合の遺族厚生年金については、5年間のみの支給とされます。若年層での男女間の雇用条件が解消されつつあるという動向により、実質的な遺族年金の縮小となりました。
A在職中の死亡、厚生年金20年以上の加入のある夫が死亡した場合などで、妻が35歳以上65歳未満 のときは、遺族厚生年金に「中高齢寡婦加算」が加算されますが、その要件が、妻が40歳以上65歳未満のときとされます。@と同じ理由によります。
いずれも、平成19年4月1日以降の死亡から適用になります。
ご相談者の妻は、まもなく30歳となられますので、その後にあなたに万が一の場合では、遺族厚生年金が妻に終身で支給されます。
また40歳以降となられた後の死亡であれば、「中高齢寡婦加算」も加算された遺族厚生年金を受けることができます。
★Q5 私は32歳、子7歳、夫の死亡により遺族基礎年金を受給中です。近々再婚予定、子を再婚相手の養子にし、一緒に生活するつもりです。遺族基礎年金はどうなるでしょうか(2006.05)
妻の遺族基礎年金は、下記のいずれかに該当することになった場合、その受給権を失うことになります。
@死亡したとき
A婚姻をしたとき(内縁関係を含む)
B養子となったとき(事実関係の養子を含む)ただし、直系血族・直系姻族の養子となっ
た場合は除きます。
また、全ての子が下記のいずれかに該当することとなった場合も、妻は受給権を失うことになります。
C子が死亡したとき
D子が婚姻をしたとき(内縁関係を含む)
E子が母以外の養子となったとき(事実関係の養子を含む)
F離縁により、死亡した父の子でなくなったとき
G子と母が生計を同じくしなくなったとき
H子が18歳到達年度末になったとき(障害等級の1,2級にあるときを除く)
I子がH以降に障害等級1,2級の障害に該当しなくなったとき
J子が20歳に到達したとき
さらに、子の遺族基礎年金については、子が上記の@〜B、FHIJのいずれかに該当することとなった場合、その受給権を失うことになります。
さて、ご相談者は再婚すると、Aに該当し、再婚した月に遺族基礎年金の受給権を失います。一方、母の失権により、子の遺族基礎年金の支給停止は解除されることになります。
そして、再婚相手は母の配偶者であるため、子との法律関係では直系姻族となり、Bのただし書きにありますように、直系姻族との養子縁組は失権事由に該当しませんので、子は遺族基礎年金の受給権を失わず、受給できることになります。
しかしながら、子の遺族基礎年金は、母と生計を共にしている間は支給停止のため、この相談の場合は、引き続き受給できないことになります。
結局、妻は再婚により失権、子は母と一緒に生活をすることで支給停止と、遺族基礎年金を受けられる状況にはないようです。
★Q6 54歳の妻が亡くなりました。56歳の私は遺族厚生年金を受給できるのでしょうか。(2006.05)
遺族厚生年金を受給できる遺族で、妻以外の場合は、死亡時において、原則、次の要件に該当していなければなりません。
@夫、父母、祖父母の場合は、55歳以上であること、ただし、年金の支給開始は60歳A子、孫の場合は、18歳到達年度末までにあるか、障害等級の1,2級に該当し、かつ婚姻をしていないこと
さて、ご相談者の妻は、国民年金21年と、結婚前の厚生年金7年、子育て後の厚生年金6年、計13年の厚生年金加入がありましたが子供はいませんでしたので、妻の死亡当時、夫は55歳以上ですので遺族厚生年金の受給権が発生します。
ただし、支給開始は60歳からですので、60歳からは夫自身の老齢厚生年金の受給権も発生しますので、ふたつの年金の支給額を比べ、いずれか一方の選択をして受給することになります。
夫は、60歳以降も在職し、在職老齢年金の支給額が少ない場合など、遺族厚生年金の選択もあり得るでしょう。
★Q7 離婚した夫が死亡したとき、遺族年金は受けられるのでしょうか?(2008.08.07)
遺族年金は、死亡した方により生計維持されていた一定の遺族が受給できるものですが、離婚後に死亡した前夫は、配偶者ではありませんので、元妻が遺族年金を受けることはできません。
一方、子(18歳に達した後の年度末までにある子、又は20歳未満で障害にある子)は、夫婦が離婚しても前夫との親子関係はなくなりませんので、前夫から子へ仕送り等があり生計維持関係が認められる場合は、子は遺族年金を受給できます。
ただし、その子が母(前夫の元妻)と生計を一緒にしている場合は、遺族基礎年金は支給されず、遺族厚生年金のみの支給となります。
★Q8 復姓や離縁、再婚したときの遺族年金はどのようになるのでしょうか?(2008.08.07)
夫の死亡により、妻が遺族年金を受けている場合、妻が結婚前の姓に戻ったり、再婚したりしたときの遺族年金の受給は以下のようになります。
実家に戻ったりして旧姓に変更した場合は、氏名変更手続は必要ですが、遺族年金を受ける権利は変わりませんので、引き続き受給できます。また、養子縁組の解消である「離縁」の場合も単に旧姓に戻るだけですので、遺族年金は引続き受けられます。
ただし、再婚をすることがあった場合は、遺族年金を受ける権利は消滅してしまいます。一度消滅すると、その後離婚しても、以前受けていた遺族年金を受ける権利は復活することはありません。
★Q9 相続放棄しても、遺族年金は受けられるのでしょうか?(2008.08.07)
相続とは、亡くなった方の財産を妻や子など一定の遺族が引き継ぐことを言い、この財産には、不動産や預貯金などのプラスの財産の他に、借金等のマイナスの財産も含まれます。そのため、亡くなった方に、マイナスの財産の方が多かった場合は、遺族が相続放棄(相続の開始があったことを知った日から原則3カ月以内に家庭裁判所へ手続が必要)することにより、相続人でなくなることができます。
しかし、遺族年金は法律上、亡くなった方の財産ではなく、一定の遺族年金を受けることができる遺族の財産という考え方をとりますので、相続放棄をしても、遺族年金を受け取ることができます。
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